Q&A
自己破産をした後は携帯電話の契約を結べるの?
1 自己破産による影響が生じることもある
自己破産をすることにより、税金・国民健康保険料などの一部の例外を除いて、自分の債務の返済義務を免れることができます。
消費者金融や銀行からの借入れはもちろん、個人間の借金や、滞納している携帯電話料金(通信料・本体の分割代金)の支払い義務も免除されます。
しかし、携帯電話料金に関する債務を含めて自己破産をする場合、その後の携帯電話の購入や利用につき影響が生じることがあるため、自己破産手続きを始める前にあらかじめ注意点を知っておくことが大切です。
以下、「携帯電話料金を支払わずに自己破産するとどうなるのか」「携帯電話代を含めて自己破産するとその後の生活にどのような影響があるのか」という点について説明します。
2 携帯電話代の支払いを滞納するとどうなるか
まずは、携帯電話の使用料金を支払わないとどのようなことになるかについて説明します。
⑴ 携帯電話が利用停止になる
支払い日を過ぎても携帯料金を払わない場合、しばらくすると郵便で支払い用紙が送付されてきます。
その用紙に記された期限内に支払わなければ、携帯電話の利用を停止されてしまいます。
携帯キャリアにもよりますが、早ければ支払い遅延から半月(2週間)程度で携帯電話を使えなくなることが多いようです。
利用停止になってもWi-Fi通信を使ってネットに繋ぐことはできますが、その環境がないと外部との連絡を取ることが難しくなります。
なお、利用停止になった場合でも、キャリアの店舗やコンビニなどで支払いをすれば、再度利用が可能になります。
⑵ 強制解約される
滞納を2~3か月続けると、回線契約を強制解約されてしまいます。
強制解約となった場合、その後滞納分を支払っても同じ電話番号で復帰することはできません。
他のキャリアで契約をし直そうとしても、他のキャリアからも契約も断られる可能性があります。
実は、「利用料金の不払い」という情報は、携帯電話会社の間で共有され、新規契約時には過去の滞納履歴を調べられることがあります。
そのため、利用停止や強制解約になった場合は、既存の携帯電話だけでなく、他の携帯電話を使うことも困難になることがあるのです。
なお、強制解約をされた際、それまでの未払いの携帯電話代の支払い義務がなくなるわけではありません。
解約後も滞納分の支払いの督促は続きます。
3 自己破産と携帯電話の関係
次に、自己破産が携帯電話に及ぼす影響についてです。
携帯電話の支払いは「回線使用料(通信料)」と「分割払い中の端末代金(本体代金)」で構成されているので、それぞれについて説明します。
⑴ 使用料(通信料)の未払いがある場合
滞納中の使用料がある場合は、自己破産時に携帯電話会社を「債権者」として裁判所に申告します。
自己破産によって免責が許可されれば、未払い分の使用料の支払義務がなくなります。
しかし、キャリア会社としては、自己破産により未払いの使用料の支払いを受けられないことが確定するため、今後も債務者と契約を続けるメリットはありません。
結果として、自己破産後に回線契約を強制解除され、携帯電話が使えなくなることになります。
ただし、携帯電話は現代においては生活必需品であるため、未払いの程度が小さい場合は、裁判所や携帯電話会社の運用などによって継続利用できる可能性があります。
⑵ 端末代金の支払いが終わっていない場合
これは、「ローンを組んで携帯端末を購入した」という扱いになるので、原則として債権者に端末を引き上げられてしまいます。
最近は端末料金が10万円を超える高価なスマートフォンも多いですので、実際に回収されることも多いですが、携帯電話本体の価値が高くない場合は端末を手元に残せる可能性もあります。
⑶ 使用料の未払いなし、本体代金完済済みの場合
この場合は、自己破産後でも継続して携帯電話を使うことができます。
自己破産ではすべての債権者を裁判所に申告する必要がありますが、未払いがないのであれば携帯電話会社は債権者とはいえないので、申告する必要がありません。
携帯電話会社としても、きちんと支払いを行っている人の契約を解約する理由はないと考えられます。
したがって、問題なく携帯電話を使い続けることができます。
⑷ 携帯を残そうと自己破産直前に滞納分を支払うのは危険
携帯電話を使えるようにするために、自己破産の前に他の債務を差しおいて滞納分を先に支払ったり、端末代金を一括で支払ったりするのは危険です。
自己破産には「債権者平等の原則」があります。
特定の債権者を優遇する弁済は自己破産において禁止されており、最悪の場合自己破産による免責が許可されない可能性もあります。
携帯電話の料金に限らず、自己破産の前に返済(家賃・水道光熱費など)を考えている場合は、必ず事前に弁護士に相談しましょう。
4 自己破産後に新しく携帯を契約できるか
自己破産後に「機種変更などをして新しい端末を買えるのか?」または「新しく回線契約を結べるのか?」という2点について説明します。
⑴ 新しい携帯端末を買えるか
携帯の端末を新しく買う場合、端末代金を分割払いとすることは難しいと考えられます。
自己破産をすると、信用情報機関に「自己破産をした」という情報が記録されます(いわゆる、「ブラックリストに載る」という状態)。
携帯キャリア会社などは「審査」において信用情報機関の情報を照会するため、申込者に自己破産をしたというデータがあると、「この人は支払いが難しいかもしれない」と思い、審査を通さないことがあります。
このように、「ブラックリストに載った」状態となると、貸金業者や銀行からの借入れはできなくなりますし、ローンも組めなくなります。
分割払いも一種のローンのようなものなので、携帯電話の端末代金を分割払いすることは基本的にできません。
一括払いであれば購入できるので、一括払いで手が届く金額の端末を選ぶことをおすすめします。
⑵ 回線契約はできるか
自己破産開始の時点で携帯電話の使用料などを滞納しており、裁判所に申立てをするときに携帯電話会社を債権者として申告していた場合、破産手続き中は契約が難しくなります。
既に述べたように、携帯会社の間で不払い情報が共有されているからです(「携帯ブラック」と呼ばれることがあります。)。
しかし、自己破産のときに携帯電話料金に不払いがなく携帯電話会社を債権者として裁判所に申告していなかった場合や、破産手続きが終了した場合(免責を受けた場合)は、携帯ブラックが解除されるので、他に問題(過去に持っていた携帯電話が犯罪に悪用されたなど)がなければ新契約を行うことができます。
なお、携帯ブラックが解除されても、キャリアが独自に顧客の情報を保存していることがあるため(「社内ブラック」と呼ばれることがあります。)、自己破産をした際に契約していたキャリアと同じキャリアに申し込みをすると審査が通らない可能性があります。
この場合は、今まで契約したことがないキャリアに乗り換えるようにしましょう。
5 自己破産の心配事は弁護士法人心 厚木法律事務所に相談
自己破産後に携帯電話を使えるかどうかは、携帯電話料金などに未払いがあるかどうかで決まります。
未払いがなければ同じ電話を継続して利用できますし、新規契約も可能です。
反対に、未払いがある場合は今の携帯電話が使えなくなる可能性があります。
未払いを解消しようとして、他の債務に優先して弁済をすると、自己破産に失敗するおそれがあります。
また、どちらの場合でも、自己破産をすると携帯電話の端末代金を分割払いで購入することができなくなります。
ご自身の場合はどのパターンが当てはまるのか、最適な解決方法はどういったものなのか、詳しく知りたい方は、当法人の弁護士にご相談ください。
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